【二章】希望
(その日、世界に激震が走る。
世界有数の軍事国家、魔法帝国等、武力・魔法により発展し他国に侵攻し支配する”力”持つ者の集い。
その数凡そ32ヵ国。其れに加え現在進行形で勃発している紛争地域・戦争地区、凡そ10区。
夫々の上空に突如巨大な大岩が出現。
突然の出来事に各国は成す術も無く大岩は流星が如く各国に降り注ぎ甚大な被害を齎した。
死者数名・重軽傷者多数の人的被害に加え、各国の軍事・魔法施設及びその育成機関は崩壊。
各紛争地域・戦争地区は大岩の直撃で各軍は壊滅、双方撤退を余儀なくされる形での終戦となった。
各国同時に発生した大事件に世界は混乱の渦に巻き込まれ、被害国は復興と原因解明に急ぎ、幸い何の影響も無かった諸国は次は自国に矛先が向くのではないかと疑心暗鬼に陥る。
世界情勢が崩壊し、各国の友好関係にも亀裂が生じ得体の知れない”何か”に世界が恐れ慄く。
そんな緊張状態が一週間程続いた次の日。
全世界全生命の脳内にある人物の声が流れ始めた。)
俺の名は、輪廻の復讐者 ふぉる
先日、各国に大岩を落とした者だ。
今、全世界の生命全ての脳内に語り掛けている。
目を閉じれば俺の姿を見る事が出来る。
(罠かもしれない疑い深い彼の言葉に従った者には、その言葉通り脳裏に語り手の映像が映る。
短髪黒髪、白インナーに黒ジャケットを着用した青年。右手には背丈程の刀、全身の肌は鱗の様な模様が浮き上がり、赤の双眸が真っ直ぐと此方を見つめている。
彼の立つ地は草木一つ無い荒野、背後には天まで昇る大木の根本が映る。)
何故あのような事をしたのか、何が目的なのか。
今此処で全てを語り、宣告しよう。
俺が世の善悪を支配し、世の力を管理する。
この世界を統べる調停者となろう。
(簡潔に且つ大胆不敵に、復讐者個人による世界支配を全世界に宣言した。)
この世は実力主義。
人間社会、国単位ではある程度の法が定められ、法によって弱き者は守られているが其の域を脱した瞬間、力による無秩序の支配が待っている。
人間同士では其れが戦争に発展し、敗者は勝者に支配され搾取される。
忌まわしき負の歴史、世界的に見れば、其れは種族間の問題に発展する。
魔族・悪魔・天使etc…と言った上位種族は種の存続の為、下位種族を超越的な力で支配し搾取する事もあるが、生存に苦労の無い上位種族(バケモノ)は私欲で力を振り翳す。
単純な支配欲に駆られ弱きを淘汰する者、気分で国々を滅ぼす出鱈目共。
等しく弱きは理不尽の前に屈しその命を散らす。
こんな不条理極まる世界に正義も悪も無い。
法が意味為さぬなら、正義論も机上の空論。
言うなれば勝者が正義で、敗者は悪なのだ。
俺はこの弱肉強食の世界を、根底から覆す。
(長々と自身の意志を語った復讐者は背後の大樹に視点を移す)
これより一ヶ月後、全世界を対象とした権能を二つ行使する。
一つ、「神威・回帰の世界樹」
是は全生物を対象とした妖術。
発動後、生命エネルギーを生存最低限にまで、魔力やその他の特殊能力全てを吸収し、
身体能力を一般人レベルにまで低下させるデバフを付与する。
二つ、「善悪反転魔法 ニルヴァーナ」
言葉通り心の善悪を反転する魔法でパイプオルガン型の神器とも称される。
全世界を対象とした反転魔法は俺次第で世界の行く末を決定付ける事が出来る。
…どう使うかは一ヶ月後に公表しよう。
全生物が力を無くし真に平等となった世界で
この俺が善悪を支配し統治する。
あの攻撃は俺からの力持つ者への洗礼だ。
この件含め異議不満、何かと思う事もあるだろう。
俺の調停思想が悪ならば、それもまた良し。
半端な正義で力を振り翳す、矮小共こそ陳腐な悪。
全生命共通の「絶対悪」たるこの俺を、現世界の道理に従い力で己が正義を示してみせろ。
(堂々と世界に宣戦布告をした復讐者。
大樹から視点が変わり四つの映像が同時に脳内に流れ始める。
各地に降り立つ我が守護天使…感情の四大天使を撃破し漸く俺への挑戦権が与えられる。
ちなみに彼らを無視して俺の元へ来ても無駄だ。
断絶空間の結界。物理敵には勿論、境界内部への次元的・空間的干渉は全て外部へ弾かれる。
天の遣いを下せぬ程度ならば、そんな世界は力を示す事も無く新秩序に屈すればいい。
…どの道結果は変わらないがな。
さて、そろそろお話も終わりにしよう。
それでは
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輪廻の復讐者の世界宣告より数日後、
各国は戦力を整え四大天使討伐へと準備を進めた。
中には有名な冒険者、傭兵、自警団等が名乗りを上げ各国共に共同戦線を張り続けた結果、
何十か国もの同盟を結んだ対復讐者の世界連合が一時的に結成された。
また、彼を良く思わない種族も参戦。
種族間で群れずとも強大な「個」の戦力として単独で四大天使に殴り込む。
…然し四大天使の実力は彼らの想像を絶するものであった。
以前下界にて”遊んでいた”天使は、固く禁じられていた理外の力「恩寵」を全開放。
戦闘規模も気にする事無く上位種族としての力を存分に発揮し、連合軍を制圧。
強大な魔族でさえ瞬殺、致命傷一つ負わせる事叶わず消耗の兆しも見えない戦況。
ある程度の情報を得られた事が唯一の成果であった。
また輪廻の復讐者の新秩序に賛同する一部の勢力が出現。
彼の理想とする世界顕現の為、四大天使攻略を阻害する動きが見られ始めた。
即ち各地での暴動の活発化、各国でのクーデターが相次ぎ発生。
鎮圧の為に人員を割かねばならない状況も相まって、四大天使攻略はおろか輪廻の復讐者撃破は無理なのでは…?と世界の脳裏にその言葉が過った。
日が経つにつれて世界の混乱は加速。
立ち向かう者、絶望し神と崇め祈る者、終末を察して自ら命を絶つ者等さまざま。
全員共通なのはこんな自体を引き起こした復讐者に畏怖し恐怖し憎悪を向けている事。
徐々に絶望の心が増える度に、別次元で静観している感情の神は嗤っていた。
然し、希望の光は未だ潰えない。
一部の有志は、来る日に備え準備を進めていた…。
四大天使攻略から三週間が経過。
戦況は膠着と進軍を一定タイミングで繰り返し同じ結果を何度も生み出すのみ。
新たな情報すら無くただ種族差の暴力に蹂躙される軍勢。
「頃合いだな」と一人の男が重い腰を挙げた。
#王凸再来 の首謀者
赤外套を纏った男 ラークス・ヴァーミリオン
数年王都地下牢にて収監されていたが、近頃王都上層部の監視下ではあるがある程度の自由が与えられた。
国家転覆罪として即急に処刑すべき大罪人だが、その魔法知識に価値を見出した上層部は彼を利用する事にした。
此度は、輪廻の復讐者撃破を表向き、王都秘蔵であるニルヴァーナ回収を裏目的として上層部は彼を戦闘支援役員として抜擢、また別に王都内外の有力勢を予め確保し情報が出揃うまで待機を続けていた。
世界革命まで残り一週間。
王都近郊の街。とある建物の一室にて、感情の四大天使・輪廻の復讐者攻略を目的とした会議が開かれる。世界の命運を握った王都推薦の強者達。世界を救う英雄となる。
今、此処に役者は出揃った。)
「さあ、世界を救おうか」
____to be continued
※実際の会議は参加者限定の大部屋で行われます。
続きは四大天使戦となります。